パソコンの動きが重くなってきたとき、思い切って再起動すると、スッと軽くなる──そんな経験、ありませんか。
からだにも、そういう“再起動”ができたらいいのに、と思ったこと。
実はそれに近いことを、操体法という調整法ではしているんです。
今日はそんなお話を、少しだけさせてください。
1. 「まだ病院に行くほどではないけれど…」の、小さな違和感
朝、起き上がるときの腰の重さ。
台所に立っていると、なんとなく脚がだるくなる。
くしゃみをした拍子に、「あっ」と感じるあの不安。
前は当たり前にできていたことが、少しずつ重たく感じられる──。
そういう小さな声が、毎日どこかに転がっている気がしませんか。
でも、病院に行くほどのことでもない気がする。
仕事や家のことで忙しくて、そこまで時間を割く気にもなれない。
「気のせいかもしれない」「まあ、歳のせいだよね」と、つい流してしまう。
わたしの施術室にも、そんなふうに何年も違和感と付き合ってこられて、ご縁があって訪ねてきてくださる方が、少なくありません。
もちろん、自己流でいろいろ試してこられた方も多いんです。
ネットで見つけたストレッチを何度かやってみた。
気になる動画をブックマークしたけれど、続かなかった。
湿布や市販の薬で、その場をしのいでいる。
ジムに通うことも考えたけれど、きつそうで一歩踏み出せない──。
一度、結論からお伝えしてもいいでしょうか。
その「続かない」「変わらない」は、あなたのせいじゃないかもしれません。
ちゃんと、理由があるんです。
今日はその理由と、じゃあどうしたらいいの?というお話をしてみたいと思います。
2. 私たちのからだは、無意識の「動きのプログラム」で動いている
いきなりですが、今朝、あなたはどんなふうにベッドから起き上がりましたか。
「まず右手を布団の外に出して、上体を起こして、そのあと足を床に下ろして……」なんて、いちいち考えていないと思うんです。
歩く、振り向く、コップを取る、椅子から立つ。
朝から夜まで、私たちはほとんどのことを“自動運転”でこなしています。
それでも、からだはちゃんと滑らかに動いてくれる。
これって、よく考えたらすごいことだと思いませんか。
からだの中に、動き方の“プログラム”のようなものが組み込まれていて、無意識のレベルで、絶えず処理してくれているからなんです。
でも、ときどきそのプログラムの中に、小さな“エラー”が混じっていきます。
長年の姿勢のクセ。
仕事や家事でくり返される、いつもの動かし方。
片脚に体重を乗せる、いつもの立ち方。
同じことを何十年もくり返しているうちに、プログラム自体に少しずつクセがついていく。
そして、いつも同じ場所に、同じ負担がかかり続ける。
朝の腰の重さも、脚のだるさも、くしゃみの不安も──実はそのプログラムのクセが、静かに教えてくれているサインなのかもしれません。
3. だから、自己流のストレッチが「続かない」「変わらない」
ストレッチや体操が悪いわけでは、まったくありません。
一時的にはほぐれるし、気持ちいいし、大切なことだと思っています。
でも、そのあと日常に戻れば、また同じプログラムで動いてしまう。
同じ動きをすれば、同じところに、同じ負担が戻ってくる。
これは、パソコンにちょっと似ています。
再起動をかけて、一時的に軽くなっても、走らせているソフト自体が重ければ、またすぐに動きが鈍くなってしまいますよね。
からだも、それと同じなんです。
しかも、もう一つ厄介なことがあります。
自分のクセは、自分ではいちばん見えにくい。
自分の姿勢は、自分では見えません。
自分の動き方のクセも、自分では気づけない。
だから、動画やネット記事を頼りに自己流でやっても、「自分のからだのどこを、どう動かして書き換えていけばいいのか」が、そもそも分からないまま、ということになりがちなんです。
続かないのは、意志が弱いからではありません。
変わらないのは、努力が足りないからではありません。
──どこに手をつけたらいいか、分からないままだったから。
ただ、それだけのことかもしれないんです。
4. 操体法は、その「動きそのもの」に手をかける調整法です
ここでようやく、操体法のお話をさせてください。
操体法は、橋本敬三先生という、医師であり鍼灸師でもあった方の臨床から生まれた調整法です。
実は「操体法」という名称は、橋本先生ご自身がつけたものではないんです。もともと特に名前のなかったものを、「これでは人に説明しにくい」ということで、周りの方々が後から名づけたのだと聞いています。
橋本先生は、明治30年から平成5年まで、96歳の生涯を歩まれました。
70代までは現役の臨床家として活動され、それ以降は後進の指導や、講演、著作活動に力を注がれた方です。
生涯を通じて「健康とはどう生きることか」を問い続けた、思想家でもあった方です。
先生は、こう言い遺してくれています。
健康は、呼吸・飲食・身体運動・精神活動の4つを、自分の責任で整えていくもの。
誰かに任せきりにするのではなく、自分で、日々整えていくもの、と。
これが、「総論」としての操体法です。
そして、その4つのうちの「身体運動」を担うのが、「各論」としての操体法 です。
(このブログでも、そこから先の“動きの調整法”としての操体法を中心にお話ししていきます)
いちばんの特徴は、動きを使うというところ。
マッサージや整体は、基本的には受け身でリラックスして受けますよね。
操体法は逆で、動いていただきます。むしろ、どんどん動いていただく。
しかも、その動かし方が独特です。
がんばって動かすのではなくて、痛くない方向、気持ちいい感覚、心地よい動き──その感覚を大切に、からだを動かしていただきます。
つらいのを我慢して伸ばす、根性で耐える、ということは一切ありません。
そして、これがとても大事なところなのですが──操体法は、家に持ち帰れる調整法です。
施術室でしかできない特別な方法ではなく、覚えて帰れば、おうちで続けられます。
「自分で書き換える」ことができる、数少ない調整法なんです。
5. プログラムを書き換える、ってどういうこと?
「書き換える」なんて聞くと、なんだかからだを機械みたいに改造する話に聞こえてしまうかもしれません。
でも、そうではないんです。
大事なのは、「上書き」ではなくて「思い出してもらう」という感覚。
からだは、本来もっとラクな動き方を、ちゃんと知っています。
ただ、長年のクセで、それを忘れてしまっているだけ。
だから、正解を教え込むというより、からだがもともと持っている“ラクな動き”を、そっと思い出してもらう──そんなイメージに近いです。
気持ちのいい感覚を頼りに、少しずつ動いてみる。
すると、からだのほうから教えてくれます。
「あ、こっちの向きのほうがラクだね」
「この動かし方だと、スーッと力が抜けるね」
そういう小さな発見を、からだがひとつずつ拾っていく。
それが、操体法の言う「プログラムの書き換え」の中身です。
「強くする」のではなく、「本来の動きに戻す」。
だから、筋トレでもストレッチでもありません。
どちらかというと、“整える”側のアプローチです。
運動が苦手でも、ブランクが長くても、大丈夫。
ジムに通うのがしんどい方でも、無理なく入っていけます。
6. ただし──一度で全部が変わるわけではありません
ここは、正直にお伝えしておきたいところです。
パソコンだって、一度の再起動で永久に軽いままでいてくれるわけではありませんよね。
からだも、それと同じです。
「これさえやれば、一発で!」というお話は、わたしはしません。
そういうことになっていない、というのが、正直なところだからです。
プログラムが本当に書き換わるには、くり返しが必要です。
一度の動きでからだが「あ、こっちがラク」と気づいても、翌日にはまた古いプログラムに戻ろうとします。
何度か重ねていくうちに、ようやく新しい動きが、からだに馴染んでいきます。
だからこそ、「続けられる」かたちが、いちばん大事だと思っています。
きつくない
痛くない
きもちいい
ラクになる
楽しい
──だから、続く。
続くから、書き換わる。
「がんばる」を選ばないから、続けられる。
根性でがんばると、たいてい、どこかで折れてしまうものです。
気持ちがいいから自然に続いてしまう、というほうが、じつはずっと強いんです。
わたしはそれを、「がんばらないセルフケア」と呼んでいます。
7. 最初の一歩は、「一度、からだを見てもらう」ことから
ここまで読んでくださって、もし「ちょっと気になるな」と思ってくださったら──
最初の一歩として、一度、施術室にいらしていただくのがおすすめです。
理由は、3章でお話しした通りなんです。
自分のクセは、自分ではいちばん見えにくい。
動画やネット記事だけでは、「あなたにとっての気持ちいい動き」は、なかなか見つけられません。
操体法の順番としては──
1. まず、からだを診させていただく
2. その方に合った“気持ちいい動き”を、一緒に見つける
3. その動きを、覚えて持ち帰っていただく
4. おうちで、少しずつくり返す
この最初の一歩を、動画やアプリで代わりにするのは、正直、少し難しいんです。
だからこそ、まず一度、お会いできたらと思っています。
わたしの施術室のこと
わたしは鍼灸あん摩指圧マッサージ師の国家資格を持つ施術者として、約30年間、操体法を臨床の軸に置いてきました。
施術室は、神奈川県川崎市の自宅施術室と、東京世田谷区の分室(築80年の古民家の一室をお借りしています)の2拠点です。
完全予約制のマンツーマンで、ゆっくりお話をうかがう時間もお取りしています。
はじめての方には、こんな時間をご用意しています
まずは、今のおからだのこと、気になっていることを、ゆっくり聞かせてください。
そのうえで、実際に動いていただきながら、からだ使いのクセを一緒に見ていきます。
最後に、おうちで続けられるかたちを、ひとつだけお持ち帰りいただきます。
「一度で完治させます」ではなく、「一緒に、続けられる道筋を見つけましょう」という時間です。
こんな方に、来ていただけたら嬉しいです
- 病院に行くほどじゃないけれど、このまま放っておくのも不安な方
- ジムや激しい運動が続かなかった方
- 自分のからだと、一度きちんと向き合ってみたい方
- 「言われた通りにやる」より、自分で理解して選びたい方
【結び】からだは、ちゃんと応えてくれます
長くなってしまいましたが、今日お伝えしたかったことは、ひとことだけです。
「続かない」「変わらない」のは、動きのプログラムが同じままだから。
そのプログラムを書き換えるには、自分で動いてみるしかない。
その最初の一歩を、よろしければ、わたしと一緒に見つけさせてください。
最後に、少しだけわたし自身のお話を。
わたしは子どもの頃、からだが弱くて、体育の授業はずっと見学でした。
運動なんて、ずっと自分には縁のないものだと思っていました。
そんなわたしが大学時代に操体法と出会って、いちばん救われたのは、「自分は自分でいいんだ」と思えたことでした。
がんばれない自分を、否定しなくていい。
気持ちのいい方に、素直に動いていいんだ、と。
今も、同じ気持ちで、皆さんとお会いしています。
「こんなわたしでも大丈夫かしら?」というご相談だけでも、大歓迎です。
──あなたのからだは、ちゃんと応えてくれます。
そのはじめの一歩を、そっとお手伝いできたら嬉しいです。